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Chapter1 知のダイナミクス
知の組織的な創造
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07
知識創造企業
SECIモデル

ナレッジマネジメント
グループウェア
コミュニティウェア
アウェアネス支援
知の戦略的な活用
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技術経営
企業の技術戦略
知識資産
テクノストック
テクノプロデューサー
情報システム企画
方法論
社会システムとしての知識
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102
産業競争力
知的財産権
社会資本
知識創造自治体
政策知
人間力革新
新産業創出

Chapter2 知のエレメントChapter3 知のメソドロジーChapter4 知のエンジン
 

技術を経営の立場からマネージする
亀岡秋男
研究開発プロセス論


技術経営とはなにか

技術経営(MOT)▲は、1970年代より米国のビジネススクールを中心に発展してきたもので、MIT▲(マサチューセッツ工科大)のスローンスクール(経営大学院)のMOTプログラムが最初とされている。「技術」とは何か、広辞苑によると、技術とは「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に利用するわざ」と定義されている。つまり簡単には「役に立つ技」である。これらは、経験的に人類が獲得し継承され、暗黙知▲として蓄積されているものもあれば、各種の道具に一体化されたり、文書の形で整理され形式知▲として体系化されている。いずれにしても、これらの技術(technology)は知識▲(knowledge)であり、貴重な価値のある資産(assets)である。
技術経営とは、簡単にいえば「技術を経営の立場からマネージする」ことである。山之内昭夫氏は、これを企業経営の立場から次のように定義している。

  (1) 技術経営は、企業全体の経営革新の立場にたち、企業理念、企業目的、企業戦略と一体となって技術戦略を開発し、これを実践することである。
  (2) 技術経営は、イノベーション▲を創出するダイナミックプロセスで、新技術知識の創生、技術資産の蓄積、技術知識の製品活用の移行過程全体の効果的マネジメントを推進することである。
  (3) 技術経営は、企業が保有する技術知識体系を新たな知識体系に変容させる行為で、知識体系の組み替えにより新たな価値を創造することである。技術経営の対象は、企業の研究技術開発マネジメントから、設計生産やマーケティング、ファイナンスを含む技術マネジメント、さらに、科学技術や産業技術政策を含むイノベーションマネジメント全体の広い範囲にわたっている(*08-1)。



技術経営のパラダイム転換 |
 キャッチアップ型からフロントランナー型へ

日本の技術経営は今、大きなパラダイム転換を迫られている。これまで日本は、改善改良型の技術開発力に優れ、新しい技術を取り入れ、小さく安く早く性能のよい商品を生み出すことで大成功した。すなわち、既存製品の先行目標を追いかけるインクリメンタル(漸増型)イノベーションが有効であった。しかし今後の課題は、欧米の先行製品を追随するキャッチアップ型から、自ら新しいタイプの製品やサービスを創りだしていくフロントランナー型への移行である。良いものを小さく早く安くするという「how」ではなく、何をつくるかという「what」を見つける発見・創造力を身につけなければならない。したがって、日本の技術マネジメントは、ラディカル(革新型)イノベーションにつながる目標創設型のリーダーシップ・マネジメントへの質的転換が緊急課題である(*08-2)。
「科学技術創造立国」を目指す日本にとって最大の使命は、新産業の創出である。従来のキャッチアップ型マネジメントは、残念ながらフロントランナーになる瞬間に通用しなくなる。
企業の技術マネジメントにおいて重要なことは〈顧客・市場〉を洞察し、優れた戦略目標を創設して経営と技術の整合を図ることである。★08-1は、日本企業の今後の技術経営の方向と方策を提示している。特に技術と経営のリンケージや産学官連携などによるリスク分散とスピード経営が重要である。この中でも、新しい製品コンセプトを創出し魅力あるチャレンジングな目標ターゲットを描く、「コンセプト創造」が企業発展の最も重要な鍵(Key Factor for Success)である。さらに、新しい技術経営の「メソドロジー(methodology:方法論)」や手法・ツールも積極的に開発・導入し、かつ、戦略目標や進捗状況を明確に示す「メトリクス(metrics:尺度)」が不可欠である。尺度基準や計量方法、共通言語やデータ等の整備が必要になる。自然科学に限らず社会科学でも測ること(measuring)の意味は大きい(*08-3)。
日本の技術力は欧米と比較して決して弱くはない。むしろ問題は技術を生かし新しい製品やサービスを創造するコンセプト力と、これを積極的に支援するマネジメント力が問題である。「コンセプト創造」の最近の代表的な成功例は、何といってもNTTドコモの「iモード▲」携帯電話である。これは携帯電話とインターネットを融合させる新しいサービスコンセプトの創出が、イノベーションに成功した要因である。この基本コンセプトはもともとマッキンゼー社の提案であり、これをさらにドコモ社が松永真理氏らを中心に商品コンセプトを明確にしていったと言える。ソニーの「AIBO」というペットロボットも、新しい製品コンセプトでエンターテインメントビジネス分野に新しい領域を拓こうとしている。MOTでは、これらの方法論をケーススタディとして「イノベーションマネジメント」コースで体系的に教育することが重要である。

技術経営教育と研究

欧米では、1970年代以降、大学のMOT教育が急速に発展し、企業経験者も含めたマスターやドクターレベルの専門家コースは百数十を超える。日本は皆無に近いが、近年、早急に充実しようという動きが出始めている。かつて日本は生産技術マネジメントにおいて、ジャストインタイム(JIT)や品質管理方式の優れた方法論を開発し成功した。今後は「経営」、「技術」、「生産」を統合する総合戦略マネジメントの、世界最高レベルの方法論を開拓しなければならない。これは、いわばジャストインタイム・イン・イノベーション(JIT・IN)ということになる。日本は技術経営プロフェッショナル教育コースを産学官が連携して早急に立ち上げる必要がある。さらにこれを支える新しい「知識科学」への期待は大きい。


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