4種類の知識資産
「知識資産▲」とは、その企業にとって価値を生み出すのに不可欠で固有な資源である。知識資産はもともと、知識創造プロセスのアウトプットとして形作られるが、また同時に新たな知識を創造するためのインプットとしても使われる。知識資産の特徴は、土地や生産設備といった有形の資産とは異なり、暗黙的でダイナミックに変化する無形の資産でもあることである。このため、知識資産は蓄積に時間がかかり、市場取引が難しいという側面をもつものも多い。知識資産というと、まず特許などいわゆる知的財産と呼ばれるものが頭に浮かぶが、それだけではない。例えば熟練工のもつ暗黙のノウハウなども重要な知識資産である。知識資産は以下の4つに分類される。
経験的知識資産は、個人のスキル、ノウハウ、愛情、信頼、安心感、エネルギーなど共体験を通して生成される暗黙知である。経験的知識資産は企業に特有の文脈に埋め込まれているので、それ自体を把握したり測定することは難しい。しかし最も模倣が難しい資産であるがゆえに、企業の継続的な競争優位に深く結びついている。
コンセプト知識資産は、イメージ、シンボル、言語などを通して表現された形式知である。製品コンセプト、デザイン、ブランドなど、組織のメンバーと顧客によって生成されたコンセプトは目に見える資産であり、経験的知識資産よりも把握しやすい。
システム知識資産はドキュメント、マニュアル、スペック、特許など、システム化された形式知である。システム知識資産の特徴は、ドキュメントやデータの形で容易に移転できることである。売買が可能であると同時に、盗用の危険性も高いため、システム知識資産に競争優位性を依存している企業にとっては、システム知識資産の法的、あるいはほかの手段を用いた保護が重要かつ緊急な問題である。
ルーティン知識資産は、日常業務での定型業務やノウハウ、組織文化など、ルーティンに落とし込まれた暗黙知である。それぞれの企業のもつ背景や物語が継続的な実践によりメンバーに共有化されることによって、ルーティン知識資産は形成される。今ある知識資産をベースに新たな知識資産を生み出すためには、どのような知識が組織のどの部分に蓄積されているのかを把握しておく必要がある。また、それに並んで重要なのが、組織がどのような知識資産を欠いているかである。企業が自己のありうべき姿(知識ビジョン)を達成するためにはどのような知識が必要であるかを認識し、もし現在そうした知識を有していないならば、外部から取り入れるか内部で蓄積する必要がある。その意味でも知識創造を効果的に行うには、定期的に知識資産の「棚下ろし」を行うことが有効である。しかしながら、知識資産を定量的かつ的確に評価する指標は未だ開発されていない。知識、特に暗黙知を数値データに転換し、客観的指標で評価することは現状では困難であり、知識資産の評価は今後の課題となっている。
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