|
|
知産創意社会を目指し産学診官・NPO連携で水平構造型産業社会に転換する
近藤修司
|
垂直産業モデルから垂直産業モデルに転換
新事業・新産業・ベンチャー創造などの多くの政策を国・地域・企業で行っているにもかかわらず、その成功確率は非常に低い。成功率を上げるためには従来のコンセプトを変革することが必要である。今、現実に起こっていることは垂直産業構造から水平産業構造へ転換しているのである。企業で考えれば、大企業→中企業→小企業、国であれば中央→県→市町村と従来の縦構造が行き詰っているのである。新しい価値を創造するためには、独自技術とニーズがダイレクトに新結合できる水平構造に変わることが求められている。大は大どうし合併して世界的にトップを目指し、メガ企業化していく。今までライバル同士の大企業が合併をして、世界トップの競争力を目指すことになる。中企業の生き方はグローバルニッチである。得意分野に特化して独自のコアーコンピタンスを極めて、究極のオンリーワン・ナンバーワンを追求する。日本はグローバルニッチの可能性を持った企業が多い。そして小企業は自立し独自の技術を持った個人がネットワークを組んでセル型の価値創造を展開する。水平構造へ変革するために、人材・技術・資金などの流動化のために産学診断官・NPOが連携し、新産業創出プラットフォームを構築する。
ここでいう、診とはコンサルタント・科学技術コーディネー・知財専門家・公認会計士・ファイナンス専門家・人材派遣・M&A・経営者スカウト・アウトプレイスメントなどの知のプロフェッショナルである。個人で考えてもこの産学診官・NPOのプラットフォームを渡り歩いて自分の知力を高めて新産業創造に貢献するのである。
日本企業の知的逆転のコンセプト
経営技術力競争力研究会では価値創造の視点から日本企業の国際競争力の比較調査を行った。現状は米国・欧州・日本・アジアの順である。各種の調査結果で科学技術は日本はトップクラスであるものの、「経営・人材」については特に弱いといわれている。弱いとすれば知的逆転するコンプトとシナリオが必要である。下記の7つの方向が日本の知的逆転の仮説になる。
コスト連鎖産業・品質信頼性産業・RDマーケティング産業・新ドメイン産業・環境文化産業・流通サービス産業・顧客技術資源産業である。これらの産業を従来の欧米キャッチアップ型の物姿追従型でなく、独自の知力で事業を創造できる人材を重視する知産創育型で行う。知産創育とは知力で新産業を創造しつづけることのできる人材を発見し、ネットワークを構築し、いつでもどこでも活用できる社会を構築することである。新産業創出の実績のある革新経営者や革新人材が国の宝である。現状は革新人材が有効に生かされていない、これが日本の最大の無駄である。
新産業創出プロセスは産学診官/NPO連携で
知産創育社会を実現するために7新産業を実現するプロセスはどうしたらよいか。前に述べた産学診官・NPO連携である。
産学診官・NPOそれぞれの組織に知力や革新力が蓄積されている。ただ、現在は縦構造のために新結合ができず新しい価値を創造するイノベーションスピードは遅い。従来の縦構造を横構造のプラットフォームを変換することで、新結合の出会いや共感が生まれ、価値増幅が始まって行く。7新産業コンセプトにそってプロジェクトをどんどん増やす。成功確率の向上策は革新経営者と革新人材の出会いの場を工夫することである。その出会いの場作りがテクノプロデューサーや革新プロデューサーの役割になる。
ニーズ・シーズマトリックスによる新産業創出法
革新プロデューサーが産学診官・NPO連携で新産業創出の出会いの場づくりを進めるときにその手法の共有化ができると新産業創出の知が共有化できる。手法としてはニーズ・シーズマトリックス(ニーシーズマトリックス)を提唱している。
シーズの専門家はシーズに詳しいがニーズをあまり知らない。ニーズの専門家はニーズには詳しいが、その問題解決できるシーズを知らない。テクノプロデュー・革新プロデューサーはこのニーズとシーズの結合の場をコーディネイトとする。革新人材や革新経営者が面白がって集まる場をプロデュースするのである。プロジェクトのスタートに当たり「仮想開発」「仮想コーディネーション」を行い、将来にわたり人材が出会う場を設定し、それぞれの役者の演じ方をシミュレーションしてしまう。可能な限りオープン型のネットワークで、誰でもが入れ、個人の顔を見えるようにして、成功報酬型で進めるのである。クローズドからオープンへ、プロダクトアウトからマーケットアウトへ、集団主義から個人主義、予算主義から成功報酬の知産創育にシフトして行く。日本の構造改革は購買代行業を創造したミスミの田口相談役の主張であるマーケットアウト型の新産業を増やすことである。プロダクトアウト産業とマーケットアウト産業が半々でしのぎあうことで、元気な個人の知力がいかされて、元気な産業社会を創るのである。
|