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操作性向上から創造性触発へ
西本一志
知識科学教育研究センター


インタフェースの現在と未来

ヒューマンインタフェース(あるいはユーザインタフェース▲)とは、何らかの道具の一部であって、各種情報や操作・処理結果などを人間とやり取りする部分の総称である。例えば、ピアノの鍵盤、自動車のハンドルやスピードメーターなどが挙げられる。また、狭い意味では、コンピュータのヒューマンインタフェースを指す。ハードウェアのインタフェースとしては、キーボード、マウスなどのポインティングデバイス、ディスプレイなどがある。また、ソフトウェアのインタフェースとしては、コンピュータの初期には文字のみによる入出力を行うCUI (Character User Interface)が主として用いられていたが、現在はMacOSやWindowsで採用されている、各種のアイコン▼1やボタン、スクロールバー▼2などでファイルやプログラムを操作するGUI(Graphical User Interface)が主流となっている。
将来のヒューマンインタフェースとして、コンピュータビジョンや音声認識・合成、力覚、触覚などの多様な知覚情報を用いたインタフェース(PUI: Perceptive User Interface)の研究がなされており、一部は実用化されつつある。
また、例えば机の上に何らかの本を置くと、その本の内容に関連する情報が自動的に検索されてコンピュータ上に表示されるような、現実世界の事物自体を計算機との情報入出力インタフェースとして利用しようとする「実世界指向インタフェース」の研究も進展しつつある。さらに、MIT▲のメディアラボを中心として推進されている「タンジブル・ビット」プロジェクトでは、情報世界と物理世界をシームレスに接続し、物理的な実体を操作するようにして情報を操作することを可能とすることを目指しており、その実現例としてファイコン(Phicon)▼3やアンビエントディスプレイ(Ambient Display)▼4 などが提案されている。これらの新世代インタフェースの研究は、これからのコンピュータパラダイムとして注目されているユビキタスコンピューティング▲研究分野と密接に関連している。
従来ヒューマンインタフェース研究は、基本的には操作性の向上に主眼を置いて進められてきたが、近年さらに「創造性を触発し強化する機能」もヒューマンインタフェースの重要な一機能として注目され始めている。これまで多くの場合創造性支援システムは、独立した一アプリケーションとして構築されていたが、今後はヒューマンインタフェース技術と創造性支援技術が融合し、多くの一般的なアプリケーション(たとえばワープロなど)のヒューマンインタフェースに創造性支援技術が盛り込まれていくと予想される。


  対応ARCHIVE
  ユーザーインタフェース▲
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  MIT▲
07 / 08 / 48 / 53
  ユビキタス
コンピューティング▲
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  ▼1
アイコン
もともとは何かを象徴する図像や記号という意味の言葉だが、計算機用語としては、何らかのファイルやプログラムなどを表す、その内容に即した小さな絵柄のこと。たとえば家計簿のデータファイルならば、コインや「¥」マークなどのアイコンを付与することによって、その中身が「お金に関係する情報」であることが一見してわかるようになる。また、そのファイルが不要になったら、「ごみ箱」のアイコンの上にそのファイルのアイコンを移動して重ねることにより、そのファイルを廃棄することができる。
  ▼2
スクロールバー
例えばある文書などがコンピュータの画面やウィンドウ中にすべて表示し切れないとき、その表示内容を上下左右に移動(スクロール)させる必要がある。この際、利用者が任意に表示の移動をするためのGUI部品がスクロールバーである。
  ▼3
ファイコン
ファイコンとは、GUIで用いられているアイコンを物理的な実体としたものである。例えばある建物の小型模型(これがファイコンに相当する)を机上に置くとその建物周辺の地図がコンピュータ画面上に表示され、その模型を机上で移動すると提示されている地図も併せて移動するというような実装例がある。
  ▼4
アンビエントディスプレイ
さまざまな情報を周辺知覚に対する情報として提示することにより、特に注意を払わずともそれらの情報を常時なんとなく感じていられるようにする情報提示装置である。例えば、ネットワーク上の情報の流量を、部屋の天井付近に取り付けた風車の回転速度で提示するというような実装例がある。



 
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