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情報の関係構造をコンピュータによって自動描画する
杉山公造
知識構造論


知識を可視化する

近年、高性能なグラフィックスをもつワークステーションやパーソナルコンピュータの普及とともに、電子文房具、ソフトウェア工学ツール、ハイパーテキスト、データベース、インターネットブラウザなどにおいて多様な知識▲を視覚的に表示したいという要求が増え、「知的ビジュアルインタフェース」への関心が高まっている。
ここでは知識とは、構造化された情報のことであるとする。情報の間に関係構造が定義されているものをいう。しかしその構造は必ずしも幾何学的なものでなく、抽象的な構造であることが多い。本来、幾何学的情報をもたない関係構造であっても要素や関係に適切な形や位置を与え、コンピュータの画面上に直観的に分かりやすく表示し、さらに操作を加えたいという要求は高く、そのための描画法や描画ツールに関心がもたれてきている。例えば、組織図は本来幾何学的情報をもたないが、階層的にかつ関係線が交わらないように表示すると分かりやすい。またネットワーク上のリンク構造などは、魚網を広げたような表示が望ましい。このような分野は広くは情報可視化と呼ばれ、このようなインタフェースは知的ビジュアルインタフェースと呼ばれる。情報やシステムの要素間の関係構造は、数学的には「グラフ」と呼ばれるので、関係構造の人間の認知的基準に基づくレイアウトを系統的に扱う研究分野は「グラフ自動描画」と呼ばれている。
よい描画を行えば図の意味を素早く明確に伝達できるが、良くない描画を行えば混乱や過ちを導く可能性が高い。左に示した2つの図を見ていただこう。両図は全く同じ構造をもっているが、大方の人は右の図をより好ましいと思うであろう。★47-1は計算機が交差数小、近接性、バランス性などの人間が通常用いているレイアウト基準を満たすように描いているからである。レイアウトにおける人間の知恵を分析し、それを実現する高速な方法を開発することにより、人手ではとてもできないような複雑で規模の大きな知識構造に対しても、有効な知的ビジュアルインタフェースを実現することができる。このような実用的な分野が現在急速に進展しているが、これも知識科学▲を支える上で大変重要な分野であると言えよう(*47-1〜3)。

 

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