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Chapter1 知のダイナミクスChapter2 知のエレメント Chapter3 知のメソドロジーChapter4 知のエンジン
グローバルな知の行方を追う
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モード2
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必要な情報、信頼性の高い情報を提供するために
池田 満
知識システム構築論


情報のウェッブから知識のウェッブへ

世界では年間に2エキサバイト以上の情報が生み出されており、その速度はますます大きくなっているという。インターネット技術・マルチメディア技術の進歩と普及とあいまって、情報システムが人類の知識の創出・蓄積・継承活動を支えるうえで担う役割がますます重要性を増している。日常生活場面でも、研究場面でも、必要な情報があれば、それを得るためにインターネット上で公開された情報に頼ることがごく普通になっている。しかし、一方で、自分が膨大な情報の中で溺れつつあるという不安感におそわれることもある。
Web上の情報が大きくなればなるほど、必要な情報がそこに含まれる可能性は高くなる。同時に、必要な情報を探すことが難しくなり、信頼性の乏しい情報が混じり込む確率も高くなる。インターネット上の情報を整理・統合し、ユーザの求めるものを、求める形で提供する情報システムを構築しようという試みが始まっている。そのためには、Web上の情報を情報システム(エージェント)が意味処理できる形式に整えることと、それを処理する知的エージェントの開発が鍵になる。そのような次世代Webの概念がWebの発明者であるT. Berners. Leeによって「セマンティックウェブ」として提唱されている。例えば、旅行をしたいときに、航空券予約、ホテル予約、コンサートチケット予約、といった一連の作業を、個人の趣味や要望に合わせて、ウェッブページを探索しながら、スケジュール調整して候補を提示し、予約まですませてくれるエージェントが、セマンティックウェッブ技術を用いて構築できるようになる。


セマンティックウェブ研究の現状

セマンティックウェッブを旗印にした研究・開発には大きく二つの流れがある。一つは、Web上の複数のサービスを統合しより有用なサービスを生み出す基盤技術の確立を目指すもので、分散コンピューティングと関連が強い。もう一つは、Web情報の意味処理の高度化を目指すもので、人工知能・知識工学を基礎においている。もちろん、両者は対立するものではなく、相補的に次世代Webの姿を指し示している。ここでは後者の視点を中心にセマンティックウェッブ研究の現状を述べる。
セマンティックウェブにおいて中核的役割を担うのは「メタデータ」の意味処理技術である。メタデータの「メタ」は、データに関するデータという意味で、例えば、本をデータとみれば、その本の書誌情報(著者・分類・発行年度)がメタデータになる。Web上の膨大なデータにメタデータが付加されれば、データの整理・統合に関する意味的推論が可能になると考えられている。このとき、データの意味をどのように記述するかということが問題になる。せっかくメタデータが付加されても、データの記述に一貫性がなければWeb情報の整理・統合のための意味処理は難しい。意味処理の基礎になるのがオントロジー(知識の体系▲)である。例えば、本の内容の分類は体系化が進んでおり、我々は、どこの図書館にいっても、その体系にそって本を探すことができる。
オントロジー記述言語(OWL,DAML)、メタデータ記述言語(XML,RDF)、ウェブサービス記述言語(DAML-S)とそれらの処理系の開発が進んでおり、セマンティックウェブの技術的基礎は整いつつある。オントロジー(知識の体系)とメタデータの整備が進み、ウェッブ情報の意味的な構造が明らかになれば、オントロジーを知る知的エージェントが、インターネット上に分散したWeb情報をメタデータを意味的に解釈しながら、我々のニーズに応じて検索・整理・統合して提供してくれるようになる。もちろん、現実的な運用を考えると、社会的に合意可能なオントロジーをどうしたら構築できるのか?、膨大なウェブ情報に誰がメタデータを付加するのか?、膨大なメタデータに対して頑強な知的処理は可能なのか?といった、困難な問題が山積している。セマンティックウェッブの実現にあたっては、これらの問題を解決することが最優先課題になっている。


セマンティックウェッブとナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントの研究は、いかに組織における知識創造力を向上させるかという点に主軸があった。いわば、コミュニティ・ローカルな知識創造理論と実践に関する研究であったと言える。インターネットの成長が、知識流通の国境をなくし、流通速度を劇的に高速化しているなかで、グローバルな視点を包括したナレッジマネジメント方法論の確立が求められていると言える。MOT(技術経営▲)はその一例であろう。
同時に、コミュニティ・ローカルからグローバル視点でのナレッジマネジメントの連続性を考慮した情報技術の確立も必要である。オントロジーを基礎にした意味構造をもったウェッブは、インターネット上に体系化されたグローバルな知識と言える。これを、セマンティックウェッブ技術を基礎にして、コミュニティ・ローカルなナレッジマネジメント情報技術と統合することが望ましい。セマンティックウェッブ技術は、様々なコミュニティの独自性・関係性を考慮し、個々のコミュニティの知識創造力を活性しながら、その成果をグローバル知識として洗練・蓄積しながら、それをコミュニティに還元するような、知識循環型社会の情報基盤としてその真価を発揮するものであろう。


  対応ARCHIVE
  知識の体系▲
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  技術経営▲
08

 
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